皆さんこんにちは。体重増加コーチの大畑です。
皆さんはココナッツオイルを食べたことはありますか。つい数年前までは日本では一般にはほとんど知られていなかった独特な甘い香りのするこのオイル。3年ほど前からでしょうか、「スーパーモデルが食べている」とか「健康に良い」「美容に良い」「ダイエットに効果的」「アルツハイマーの予防になる」などの謳い文句で一躍ブームになりなりました。今はブームも落ち着いて、一つの食材としてそれなりに定着した感があります。
世間では痩せるオイルとして紹介されることも多いココナッツオイル、今回はそんなイメージを覆す「ココナッツオイルの本当の効果」をお話ししましょう。
テーマはずばり、「ココナッツオイルで太る方法」です。消化力が低く、沢山食べても太ることができない方必読です!
ココナッツオイルは高カロリー
ココナッツオイルはその名の通りオイル(油)なので100%脂質です。
脂質はカロリーが高いことは皆さんもご存知だと思いますが、実際どのぐらいカロリーがあるのか知っていますか?
数値で表すと、脂質は1gで9kcalあります。糖質(炭水化物)やタンパク質が1gで約4kcalあるので、約2.2倍カロリーがあることになります。
2倍以上なので確かに高いですね。
ですが、実はそれだけではないんです。
実際に食卓に並ぶ食品と比較すると、その差は5倍にも10倍にもなります。なぜなら、糖質とタンパク質の食べ物は水分を多く含むためカロリーも水増しされるのですが、オイルは水分を含まないためカロリーはほとんど水増しされないのです。
例えば、一般的にカロリーが高いと思われている白米と比較してみましょう。
- 100gのご飯(白米) = 約170kcal
- 100gのココナッツオイル = 900kcal
カロリーが高いご飯と比較してもココナッツオイルの方が約5.3倍もカロリーがあります。
コップ1杯のフルーツ100%ジュースと比較するとどうでしょうか。
- 200gのグレープフルーツジュース = 80kcal
- 200gのココナッツオイル = 1800kcal
ジュースとの比較では、ココナッツオイルの方がなんと22倍以上もカロリーがあります。ジュースよりもオイルの方がカロリーが高いのは知っていても、まさかここまでカロリーが違うとは思わなかったのではないでしょうか。
こんなにもカロリーがあると、脂質を食べれば太るのも当然と思われるかもしれませんが、残念ながら痩せ体質の方にとっては話はそう簡単ではありません。
脂質はとてもカロリーが高いのですが、残念なことに大半の脂質は消化がとても悪いからです。
痩せ体質の人の中には、太りたい一心で、揚げ物をたくさん食べたり、大量のマヨネーズをおかずにかけて食べる方がいます。
普通の体質の人がこのような食べ方をしたら、間違いなく太るところですが、消化力の弱い痩せ体質では脂質をきちんと消化できずに、吸収されないまま排泄してしまうので、思うようには太れません。
痩せ体質の方が脂物をたくさん食べても太れない理由は油の消化の悪さにあるのです。
「高カロリー」と「消化の良さ」の両立
いくら高カロリーのものでも吸収されなければ太りません。脂質は全般的に消化が悪い事は述べた通りですが、ココナッツオイルはどうでしょうか?
実は、ココナッツオイルは消化が良いのです。
ココナッツオイルは、中鎖脂肪酸と呼ばれるとても消化の良い成分を多量に(60%程)含んでいる非常に珍しい脂肪酸構成のオイルです。サラダ油、オリーブオイル、チーズ、マーガリン、肉の脂身など食卓に並ぶ大半の脂質にはこの中鎖脂肪酸は殆ど含まれていませんが、ココナッツオイルには桁違いに多量に含まれています。
その消化の良さから、中鎖脂肪酸は医療目的で利用されることもあります。
例えば、病気が原因でタンパク質の摂取量を制限されている方の栄養摂取目的で使用される場合があります。タンパク質を制限すると、タンパク質が減った分のカロリーを炭水化物と脂質でカロリーを賄う必要がありますが、炭水化物を過剰に取ると血糖値が上がりすぎるなど健康的にマイナスの面も多いため、脂質も増やしてカロリーを補う必要があります。ところが、脂身を沢山食べたり、普通のオイルを飲むなどしてカロリー増やしてしまうと消化の負担が増えて体調が悪くなったり、消化が追いつかずに一部吸収できなくなるなど様々な問題が起こってしまいます。脂質でカロリーを上げ、なおかつ身体の負担を極力増やさず、きちんと消化するために中鎖脂肪酸が使われているのです。
このように医療目的でも利用される中鎖脂肪酸を多量に含むココナッツオイルは、一般的に両立しないはずの「高カロリー」と「消化の良さ」が奇跡的に両立しています。
そのため、油物を食べても消化できずに太れなかった痩せ体質の人でも、ココナッツオイルなら消化されやすく、体重増加にもつながりやすいのです。
なぜダイエットに向いていると言われるのか
これまでお話ししたように、ココナッツオイルはカロリーがとても高く、消化もとても良い。太るのには好都合な食材ですが、一般的にはダイエット向けの食材として知られています。
何故でしょうか?
これには中鎖脂肪酸に対する研究結果が関係しています。
複数の研究があるのですが、「置き換えで使うと内臓脂肪が減った」という結果が出ています。
言い換えれば、今まで使っていた脂肪を減らし、減らした分を中鎖脂肪酸で補ったら、カロリー摂取量は変わらないのに内臓脂肪が減ったという結果です。
このような実験結果が都合よく解釈され、あたかも「食べると痩せる」かのように宣伝されてブームとなって広がりました。
この結果は本当でしょうか?
実は、中鎖脂肪酸は消化が良いという特徴だけでなく、もう一つ特徴があります。それは「エネルギーとして燃焼されやすい」という特徴です。この性質は確かにあるので、厳密に置き換えで使えば、特に脂質の燃焼がされにくい太りやすい体質の人だと痩せる可能性があります。つまり、研究結果通りになる可能性はあると言えます。
「なんだ痩せるんじゃん!」と思った方、早とちりしないでください。
これは、「太りやすい体質の人が」「厳密に置き換えで使った場合に」痩せる可能性があるというだけの話です。つまり1日の総カロリーを変えずに取り入れた場合の話です。
食べ物は基本的にカロリーがあるので追加で食べて痩せるものなどありません(※1)。ココナッツオイルも同様です。ココナッツオイルを食べた分だけ他の脂質を減らした場合に限って少し痩せる可能性がありますが、ココナッツオイルを追加で食べれば痩せることはまずありません。
消化力が低い人にとっては、消化の悪い脂質を控えてその代わりココナッツオイルを取るような置き換えで使っても、総摂取カロリーは変わらないにもかかわらず消化吸収率が高まって太る可能性があります。
なお、中鎖脂肪酸の内臓脂肪減少効果は控えめに言ってもマイルドなので、実際は、厳密に置き換えてもそんなに痩せることはありません(※2)。痩せたい人にとっては残念な話ですが、世間で言われているほどダイエットの味方にはならないのです。
ココナッツオイルの効果的な食べ方 - ココナッツオイルで太る方法
ココナッツオイルの体重増加効果を最大限に発揮させるには「摂取のタイミング」「量」「組合せる食品」に気を配りましょう。
まずタイミングですが、最も効果的なのは朝食時の摂取です。
体質で痩せている人の多くは朝のタイミングで消化力が最も下がる傾向があります。
最小の消化力しかない朝というタイミングで、脂質をしっかり消化させるために、消化の良い脂質(ココナッツオイル!)を取り入れ、それ以外の脂質は控えめにします。
例えば、朝がパン食ならトーストにココナッツオイルを塗って食べたり、和食なら味噌汁にココナッツオイルを入れたり、スプーンですくってそのまま食べても良いです。ココナッツオイルは独特な甘い香りがするので普通のココナッツオイルは味噌汁とは味が馴染みませんが、ココナッツの香りのしない無香のタイプも市販されているので、そのような製品なら味噌汁に入れても比較的食べやすいと感じる方が多いようです。もちろん、ココナッツの香り自体が苦手な方には、何に入れる場合でも無香の方が良いですね。無香ならコーヒーやココアなど飲み物に入れても良いでしょう。
これまで無理に脂質を取っていた場合は、その脂質を減らして、ココナッツオイルに変えるだけでも良いでしょう。例えば、パンにマーガリンを塗って食べていたなら、マーガリンを控えて、代わりにココナッツオイルを取るようにするのも一つの方法です。
食べる量も重要です。
いくら消化の良いココナッツオイルでも多量に取ると消化が追いつかなく可能性があるので、原則として多量に食べるのはやめましょう。
体格や体質、他に何を食べているかによって量を調節する必要があるので幅のある表現になりますが、1回に食べる量としては5〜14gが目安になります。ただし食べ始めは注意が必要です。
ココナッツオイルに多く含まれる中鎖脂肪酸は他の食品にはほとんど含まれていないのでこれまでココナッツオイルを常食していない方は身体が慣れれていません。そのため、最初は1回に2〜3gだけ取るようにして、慣れるに従って少しずつ量を増やしていきましょう。2日で1g増やすペースが目安です。
ゆっくり増やしても中には体質的に合わずにお腹の調子が悪くなる方も稀にいらっしゃるので、決して無理はせずに、合わない場合は中止しましょう。
ココナッツオイルだけ食べてもほとんどインスリンが出ない(太るスイッチが入らない)ので、必ず炭水化物と一緒に食べましょう。例えば、パンやおにぎりと一緒に食べます。身体作りにはタンパク質も重要なのでタンパク源も加えましょう。例えば温泉卵や鮭の切り身など消化の良いタンパク源と一緒に食べます。
これまでの朝食が脂肪が控えめで栄養バランス良いなら、ヨーグルトにココナッツオイルとハチミツを入れたものを付け加えるのもお勧めです(※3)。
ココナッツオイルは香りの強いものから無香のも、液体のタイプなど様々な製品があります。組み合わせ次第で様々な食べ方がありますので、皆さんも色々と試して、美味しい組合わせを見つけてみてください。
ココナッツオイルを食べる際の注意点
ココナッツオイルは脂肪酸構成が特殊な油なのでいくつか注意点があります。実際に食べてみる前に、必ず以下をお読みください。
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ココナッツオイルを調理に使う方がいますが、ココナッツオイルは沸点が低いため熱を加えると揮発しやすく、引火しやすいのでご注意ください。同様の理由で加熱調理をするとオイルが飛んで量がどんどん減っていきます。そのため加熱調理に使うのはお勧めしません。引火しやすので、揚げ物には絶対に使わないでください。
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ココナッツオイルは一般的には常温保存で良いと言われていますが、常温で保存すると酸化が進みやすいので私は冷蔵保存をお勧めします。酸化すると香りが悪くなってとても食べにくいのです。冷蔵すると固まって使い勝手は落ちるので、小さい瓶に小分けにしてすぐ使うぶんだけ常温で保存するのも良いでしょう。
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量を正確に把握して取りましょう。上述したように、ココナッツオイルは多くても14g程度と少量しかとらないので、適当にスプーンですくって食べると、思わぬ量を取りがちです。グラム単位で計れるキッチンスケールで正確に計って取るようにしましょう。慣れてくれば、目分量と実際の重さが一致してくると思いますが、そうなるまでは毎回計るようにしましょう。
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中鎖脂肪酸は健康的に有用な面があるとはいえ、人間の体には他の脂肪酸も必要です。ココナッツオイルは中鎖脂肪酸が60%以上もある偏った脂肪酸構成なので、脂肪酸の体内バランスを考慮して、長期的に(目安は3ヶ月以上)継続して取り続ける場合は量は控えめにすることをお勧めします。
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消化が良いとはいえココナッツオイルも油なので、体調が悪かったり高ストレス時などではきちんと消化できなくなることがあります。体調が悪い時はココナッツオイルの摂取は控えましょう。体調に問題がなくても、仕事が忙しすぎる時、猛暑など環境ストレスが高い時は、量を減らすなどの調節をしましょう。
いかがでしたか?
世間ではダイエットに向いた食材と言われているココナッツオイルですが、そのイメージとは反対に、実は太るのに適した食材なのです。
このブログに書いていることは、20年以上体重増加の研究をして、48kgだった体重を90kgを超える体重にまで増加させた私が、8年間体重増加コーチとして大勢の方を指導して実際に検証した内容です。
私が、ココナッツオイルの特殊な組成が体質で痩せている人の体重増加に向いていることを発見し、体重増加の指導に利用し始めたのは5〜6年程前ですが、その頃は、ニュートリションの専門家の間でもココナッツオイルのダイエットへの効果はマイルドという認識が一般的でした(実は今でもそうです)。
スマートゲインの体重増加プログラムでは、カウンセリング結果によって効果が出ることが予想された方にフードコントロールの一部として取り入れており、一定の成果をあげています。もちろん、私の指導でココナッツオイルを使った人の中にココナッツオイルで痩せた方は一人もいません。
そのような背景があったので、ココナッツオイルがまさかのダイエット食品として流行りだした時は、驚きました。耳あたりの良いキーワードに大勢が飛びついて、一気に広がり、品薄にまでなった状況に、当時の私は引いてしまいましたが、後になって一つ良いことは、ブームのおかげで現在は入手が容易になったことがあります。
以前は海外の食材を専門に扱うようなお店でしか売られていなかったので、フードコントロールで利用する参加者の中には手に入れられない方もいて、個人輸入での購入方法をお知らせする事もあったのです。
ココナッツオイルブームはすっかり落ち着いたので、最近は割引価格で売られているのをよく目にします。今なら手軽に試すことができますね。興味のある方はぜひ少量から試してみてください。
ココナッツオイルはダイエット向きという認識はまだまだ根強いですが、私が何年も地道に指導しているので、痩せやすい体質の人にとってはココナッツオイルは太るのに適した食材ということが少しずつ普及して来ていると思います。
今回ご紹介した方法は平均的なカロリーを摂取していても太れない方の多くには効果的ですが、体質は人それぞれ異なるため、消化が良いココナッツオイルでも身体に合わない方もいらっしゃいます。
私がコーチを務める体重増加プログラムでは、カウンセリングで体質やライフスタイルを把握し、個々の体質や目的に合わせた最適な体重増加方法をプランして指導しております。自己流で太れなかった方や、健康的に太るためにはまず最初に何をしていいかわからない方は、ぜひご参加ください。
(※1) 0キロカロリーとして売られているものも、本当は多少カロリーがあります。
(※2) 糖質代謝からケトン体代謝へと身体が切り替わる程に炭水化物の比率を極端に下げる特殊なダイエットを行う場合は、中鎖脂肪酸摂取は効果的と言えますが、カジュアルに軽く置き換えるだけではダイエット効果もかなり限られます。
(※3) 乳製品は合わない人も多いので、乳製品でお腹の調子が悪くなる方は避けましょう。